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2021.07.21(水)

等電位化の意味

雷がもたらす被害は甚大であり、日頃から雷対策をしている人も多いのではないでしょうか。

雷対策を講じる際、重要な概念となるのが「等電位化」です。

 

理科の授業で習ったことがありそうでも、その意味を明確に説明できる人は少ないでしょう。

 

そこで今回は、雷対策で大事な「等電位化」の意味を紹介します。

雷対策を調べていて疑問がある方や、これから雷対策を始める方は必見です。

 

 

等電位化とは

はじめに「電位」の意味を解説した後、等電位化の仕組みを見ていきましょう。

 

電位の意味

まず、電荷によって静電気力が発生する空間を電場と呼びます。

この電場において、電荷に働く位置エネルギーが「電位」の表すものです。

また、電位は0V地点(大地)に対する電圧(V)を指します。

2点の異なる電位(電位差)がある場合、電位は高いところから低いところへと電流が流れます。

同電位の場合、電流は流れません。

 

雷対策で重要な等電位化

雷が鳴ると、雷によって発生する瞬間的な過電圧(サージ)が管や線を通って建物内に侵入するケースがあります。

その際、金属部品の接地との電位差をゼロにする仕組みを「等電位化」といいます。

等電位化によって火花放電による火災や電気機器の絶縁破壊を防げるのです。

 

等電位化の方法

建物内や建物内に引き込まれる全ての金属製構造部材を連接して接地させます。

金属部品に侵入してきたサージは大地に放流され、接地との電位差が無くなるという仕組みです。

以上のような等電位化の手法を、IEC・JISでは雷等電位ボンディングと呼びます。

 

ただし、電源線・通信線・電話線などは直に金属製構造部材に繋げられないため、SPD(避雷器)を通して接地に接続させます。

建物全体の電位差を無くすためには、雷保護ゾーンの境界ごとにSPDを置いたり、建物の鉄骨同士を相互に接続したりして、ボンディング網を作るのが一般的です。

 

 

統合接地とは?

統合接地とは、A~D種の4つをまとめた接地工事の方式です。 主に接地極間の電位差をなくす目的で実施されます。

 

接地の種類

電気機器や配線を地面と接続し、漏電等の事故が起きた際に感電を防ぐための安全措置を接地工事といいます。 以下の4種類があります。

 

  • A種……高圧電気設備や避雷針、避雷器に施されます。抵抗値10オーム以下。
  • B種……高圧から低圧へ変圧を行う変圧器の低圧側の1線に施されます。高圧と低圧の混触時に低圧側での事故を防止します。抵抗値は150÷地絡電流値で求められます。
  • C種……300ボルトを超える低圧電気機器への接地。抵抗値10オーム以下。
  • D種……300ボルト以下の低圧電気機器への接地。抵抗値100オーム以下。

 

 

単独接地

機器ごとに単独で接地を実施する方式を、単独接地といいます。

従来からある方法で、それぞれを接続する必要がないため、工事そのものの手間は軽減できます。

地盤が堅いところや地中に埋設物があるため、接地棒の接続ができない現場などで用いられる方式です。

注意点として、相互間での影響をなくすため、十分な距離をとって工事を行わなければなりません。

 

統合接地

複数の機器の接地線を1つの接地線へ接続し、共有する方式です。 一点接地、共用接地ともいわれます。 各種の接地極を1つにまとめ、建物の鉄骨部とも接続します。 統合接地を行うことにより接地極同士の電位差解消につながります。

 

統合接地のメリット

統合接地により電位差をなくすと、建物に雷が落ちたときに大きな効果を発揮します。

落雷時、雷による電流は建造物の鉄骨を伝って大地へ流れるようになっています。

このとき、電流はA種接地から地面へ流れます。 すると、A種に近いところでは電位が高く、離れた場所では電位が低くなり、施設内に電位差が生まれます。

 

電気は電位の高いところから低いところへ流れる性質を持っており、雷電流の一部が別の接地極に流れて込む可能性があります。

電気機器へと流れ込んだ雷電流は、半導体素子など高電圧に弱い部分に負荷をかけ、異常や破損の原因になります。

統合接地により等電位化を実施することでこうした問題を解消できます。 この方式でも落雷が起きれば単独接地と鉄骨周辺の電位が上がります。

 

しかし、それぞれの極が接続されているため、他の電位もあわせて上昇。 建物全体で電位が上がるので、結果的に電位差が生じずに済みます。

電気機器への雷電流の流れ込みを防止できるようになります。

 

統合接地のデメリット

B種の接地抵抗やC種、D種での地絡電流は制限されます。

B種やC種、D種接地が接続しているため、漏電の際には地絡電流が大きくなってしまう可能性があります。

ほかにも、事故発生時の電位の波及やノイズの回り込みといったデメリットには注意が必要です。

また、採用にあたっては、建物の接地抵抗を2オーム以下にするという条件も守らなくてはいけません。

 

等電位化のJIS規格

等電位化は2003年にJISで規格化されました。 ここでは主な規格内容について、分かりやすく解説します。

 

2003年に標準化

2003年に新JIS規格化されるまで、電気設備などの接地は「電力」「通信」などそれぞれが属する分野での法令に基づいて行われていました。

しかしそうなると、いざ落雷があった際、それぞれの接地で大きな電位差が生じてしまい、そこからお互いの接地を経由して雷サージが侵入し合った結果、破損や事故につながるといったケースが多発しました。

その後、民間放送局などが先進国であるアメリカに倣い、各自で接地基準を更新していったものの被害が大きく減少することはなく、ようやく2003年に標準化されたのです。

ただし、JISでは「等電位化」というワードではなく、結合や接着という意味合いを持つ「ボンディング」を使用し、「等電位ボンディング」で統一されていることを知っておきましょう。

 

JIS A4201:2003

新JIS規格のメインとなっているのが「JIS A4201」です。

旧JIS規格では避雷針の周囲のトラブル、つまりあくまでも建物外部に着目した内容でした。

しかし新JIS規格では、建物の内部で起こりうる火災や感電、爆発の被害から保護するシステムにも目が向けられ、具体的には等電位化ボンディングの施工や安全隔離の確保などが規定されています。

 

JIS C0367:2003

先述した「JIS A4201:2003」が建物や内部にいる人たちを保護する内容となっているのに対し、「JIS C0367:2003」は電子システムを保護するものとなります。

JIS A4201を用いた保護システムが採用されている建物に対して落雷を受けた際の電磁波干渉の度合によってエリア分けを実施、それぞれのエリアでいかに電磁遮蔽するか、ということから等電位ボンディングの具体的な方法まで詳しく記載されています。

新JIS規格には、これらに加えて低圧避雷器に関する内容も追加されました。

これまではJIS規格内に低圧避雷器に関する取り決めがなく、設置基準も曖昧になっていました。

そこで、2004年に従来のIEC規格をそのまま移行し、新JIS規格にて標準化されたのです。

現在では「JIS C5381-1」に電源用、「JIS C5381-21」に通信用避雷器に関する規定が記されています。

 

 等電位化によって雷から建物を守る

いかがでしたでしょうか。

今回は、雷対策を講じる上で大事な「等電位化」について解説しました。

等電位化の仕組みがあるからこそ、建物内の電気機器は守られています。

仕組みや構造を理解して、万全の雷対策を始めましょう。

 

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